セルフサービスBIを導入すべきか?機能、メリット、課題を解説
最終更新日:2021-9-17
過去五年、企業のデータ利活用と意思決定に重要な役割を果たすBI(ビジネスインテリジェンス)では、一番のトレンドはセルフサービスBIでしょう。セルフサービスBIは、専門スキルがなくても、ユーザがデータにアクセス・操作できるようにするデータ分析へのアプローチとして、多くの企業に利用される一方、課題も生じます。ここはセルフサービスBIの導入をお考えの担当者のために、従来型BIとの違いを踏まえて、そのメリット、課題、検討際の注意点について解説します。
目次
セルフサービスBIとは?
ガートナーによると、セルフサービスBIとは、エンドユーザが、承認され、サポートされたアーキテクチャとツールの枠内で、自分でレポート作成やデータ分析をするという概念です。(出典:Gartner IT Glossary)
従来のBIツールと比べて、セルフサービスBIはデータを迅速かつ少ない労力で分析できます。「データディスカバリツール」や「データビジュアリゼーションツール」とも呼ばれます。
セルフサービスBIツールにより、ビジネス部門がITとデータ分析部門に頼らず、ニーズにあわせてレポートとダッシュボードを最初から作成・変更することができます。 グラフィカルなUIでデータ項目を選択したりすることで必要な情報を抽出し、分析結果を生成するので、意思決定のスピードを上げることが期待されています。
セルフサービスBIと従来型BIとの違い
セルフサービスBIと従来型BIは異なる原因で存在するので、どちらがよいかは思い切って言えません。以下は対象、利用目的、運用の流れからセルフサービスBIと従来型BIとの違いを説明します。組織のユースケースに応じて1つまたは両者を利用する場合があります。
BIツールが日本に紹介された当初は、情報システム部門が経営層のためのダッシュボードを作成して提供していました。セルフサービスBIでは、このダッシュボードを現場の利用者が自ら作成できます。自分に必要なデータを集め、それらをグラフ化し、モニターできるのです。必要に応じて表示するデータも柔軟に変更ができます。
利用目的
従来型BIツールの利用目的は部門と会社の状況を把握するための定型レポートとダッシュボードを作り、ビジネスや組織全体に共有します。鍵となる指標について共通な情報を見るので、同僚間と部署間のコミュニケーションのズレを解消します。
セルフサービスBIは個々のデータ分析のニーズ、素早く対応することを目的します。エンドユーザーが特定の問題に対して、必要なタイミングで自ら原因を見出す場合に使用されるので、必ず全員に共有すると限られません。
利用者
従来型BIはデータを抽出するためのSQLとデータベース知識が必要であり、複雑なレポート仕様に対応するので、従来のBIの利用者は情報システム部門のデータアナリストなど、専門的なスキルを有している方が対象とします。
一方、セルフサービスBIが準備しておくデータを元に、直感的な操作でアドホック分析のためのレポートを作ります。特別なITスキルを持っていないエンドユーザーでも使える軽量なBIツールです。業務部門のエンドユーザだけではなく、ビジネスアナリストとデータサイエンティストにも向いています。
運用の流れ
従来型BIでは、データサイエンティストとITチームがデータへのアクセスを制御します。エンドユーザが新しいニーズがある時、レポートに対する要件を送信します。リクエストが承認されると、ITまたはデータ分析チームがデータを抽出・変換し、データウェアハウスにロードし、それから、レポート・ダッシュボードを作成します。
セルフサービスBIでは、IT部門が業務部門のセルフBIに対する要件を収集し、セルフサービスBIをサポートするデータウェアハウスとを準備した後、エンドユーザはデータを検索し、パーソナライズされたレポートを作成できるようになります。しかし、利用可能なデータと、意思決定を行うためのデータを検索する方法をユーザが理解できるように、事前に業務部門にトレーニングを提供する必要があります。
セルフサービスBIの特徴
操作しやすい直感的な操作画面
セルフサービスBIはデータソース内のテーブルからデータ項目または変数を選択し、メジャーとィメンションにドラッグアンドドロップするだけで、リアルタイムに素晴らしいチャートを生成します。 独自のダッシュボードを作成することにより、接続されたデータのアドホック分析を簡単に実行できます。
最初、BIツールが日本に紹介された頃、ダッシュボードは情報システム部門のIT技術者によって作成し、業務担当者や経営層に提供していました。セルフサービスBIなら、現場の利用者が業務に必要なデータを集め、グラフ化し、自らこのダッシュボードを作成できます。また、必要に応じて表示するデータも柔軟に変更できます。
使いやすいデータコネクタ
データベース、ファイル、CRM、マーケティング分析ツールなどをセルフサービスBIに簡単に接続し、データを操作できます。 リモートとローカルのデータウェアハウスの2種類の接続方式により、データを保存する場所を選択し、他のデータセットと組み合わせることができます。
豊富なテンプレート
業務担当者にとって、自分で新しいダッシュボードを作る時間がなく、すぐ結果を得たい場合があります。セルフサービスBIはプロセスをシンプル化し、多くのテンプレートを用意します。テンプレートにデータ項目をはめ込めば見事なレポートが表示されるので、設計工数を削減します。
簡単メンテナンス
作成したグラフの参照元データの変更みたいな少し修正が必要な場合、従来のBIツールでは情報システム部門など、IT担当者にメンテナンス作業を依頼する必要があります。セルフサービスBIでは、データ連携の設定、可視化効果の修正などもユーザーで簡単に行うことができ、必要な情報を必要なタイミングですぐ手に入れることができるのです。
セルフサービスBI活用のメリット
セルフサービスBIを活用する主なメリットは二つがあります。
短時間で欲しいデータを手に入れる
セルフサービスBIを利用することで、忙しいIT部門がレポートを作成するまで何日何時間も待たされることがなくなります。リアルタイムなデータ分析により、実用的なインサイトを引き出し、競争上の優位性をもたらします。
メンテナンス作業を削減する
定型レポートは仕様が古くなったり、あるデータを追加したりする場合、IT部門によるデータ更新・処理などのメンテナンスが必要です。非定型レポートに対応するセルフサービスBIでは、エンドユーザがデータとレポートを変更できるので、IT部門の保守負担を軽減するのです。情報システム部門の管理コストの減少とエンドユーザーの意識改革にもつながります。
セルフサービスBI導入に関する三つの課題
セルフサービスBIが使い勝手がよく、業務効率を上げるツールという印象を受けるでしょう。しかし、導入に取り組む課題があります。
- セルフサービスBIはエンドユーザーが主役になります。業務部門からセルフサービスBIに対する要件を収集、抜粋することは、ずいぶん時間がかかります。しっかりと要件を洗い出し、要望に合ったBIツールを選定することが大事です。
- 企業のデータガバナンスに則ったセキュリティ機能を担保できることです。セルフサービスBIでユーザーがデータに直接触れる一方、データガバナンスポリシーがない場合、不正確なデータ分析や情報漏洩を起こす可能性があります。主要指標、レポートの作成・共有のプロセス、機密データへの権限、データのセキュリティを確保するルールを定義する必要があります。
- データベースの性能の向上も1つの課題です。 セルフサービスBIを数百人まで利用すると、データベースの速度が低下したり、完全にクラッシュしたりする可能性があります。
セルフサービスBI検討時に考えるべきこと
以上に述べた課題を避けるために、セルフサービスBIの導入を検討する時、ぜひ下記のことを考えてください。
- IT部門がBIソリューション(特にオープンソースのBIツール)をサポートできますか?
- BIのメーカーは強力なサポートとメンテナンスを提供していますか?
- 組織には、セルフサービスBIの実装に必要なハードウェアとデータベースがありますか?
- セルフサービスBIを既存のシステムに組み込みますか?
- データソースに簡単に接続できますか?
- BIシステムでは、部署職位別に権限を管理できますか
終わりに
ここまでの説明を通し、セルフサービスBIをめぐる基本的な状況がご理解いただけるだろうと思います。セルフサービスBIのトレンドを追わず、「自社にはどのようなデータ分析のニーズがあるか」「BIを使ってどんなことをしたいのか」をよく見極め、従来型BIにせよ、セルフサービスBIにせよ、自社に最適なBIツールを導入することが重要です。
BIの特徴とトレンドについて詳しくは、こちらの記事も参考にしてください。